「なぁ、コンラッド………もしもおれが死ぬときが来てもさ……。
あんただけには笑ってて欲しいんだ」
「ユーリ……いきなりどうしたんですか?
そんなことにならないように俺がついてるんだから、そんなこと言わないでくださいよ」
「別にそんな風に言ったんじゃないけどさ………ゴメン。
ただ、昨日夢の中で……おれが死ぬ夢を見ちゃってさ~」
変な話しだよな~なんて笑いながらコンラッドに話したことが
本当に起きてしまうなんておれはこのとき思いもしなかった…………。
#1 失われた記憶
夏休みの前半で宿題を済ませようとしたおれがバカだった。
「……あーあ。
こんなことならマジメに勉強してれば良かったな~……」
マジメに授業をうけていたつもりだったのに、問題集を開いたとたん出てきたのは謎の記号……。
見事に1ページ目からつまずいたのだった。
ブツブツと呟きながら書店に入って参考書を選んでいると後ろから声をかけられた。
「なぁ~に独り言を言ってるんだい、渋谷?」
「うわっ!?……村田が何でここに?」
声のした方を振り向けば、村田がにこにことおれの方を見ていた。
すでに手の中には何冊か日本語じゃない本を持っている。
「いや、それはこっちの話しだよ。
なんで脳筋族の渋谷が書店にいるんだい?」
雨でも降るんじゃないかな?と外の天気を気にし出す始末。
「いや、それはちょっと失礼だろ……」
人の言ってることを理解したのかしてないんだか、
おれの手の中にある参考書を見つけるとなるほどと勝手に納得したような顔をしてきた。
「はは~ん。参考書ってことは夏休みの宿題が進まないってやつだね?」
「………う、当たり~。。。」
「参考書なんて買わなくたって、渋谷には頭のいいお兄ちゃんがいるじゃないか」
「勝利に教えて貰うなんて絶対無理っ!!
教えてほしけりゃお兄ちゃんと呼べ!なんて言ってくるんだから……」
勝利なんて当てにしようとする方が間違いだ。
萌と妄想で生きてる人に教わる事なんて何一つ無い。
「確かに、君のお兄さんなら言いそうだね。
それにしても渋谷は酷いな~………」
「………え、何かおれ村田に酷いことでも言ったか?」
まったくもってそんな事を言った覚えがない。
村田に尋ねるとふう、とため息をはいた。
「そんな参考書なんて買わなくたって、近くにいるじゃないか~」
「もしかして……村田が教えてくれるのか?」
キラキラと顔を輝かせて訪ねてみれば、にっこりと微笑み返してきた。
「さぁ、その参考書を買う空いたお金で飲み物とか買って渋谷ん家に行くか~!」
「空いたお金でって……ま、いっか」
書店を出てコンビニに行き、飲み物とお菓子をあれこれと買って。
「そういや、村田は夏休みの宿題終わったのか?」
「あったぼーよ!!そんなの初日に済んじゃったぜぃ!」
「いや……村田、そのキャラはおかしいから止めとけ……」
「嫌だなー、冗談に決まってるだろ?
……と言っても、宿題はもう済ませちゃったけどね」
「さっすが大賢者様だなー……」
何の宿題が終わってないとか、宿題を終わったら何をするとか………
話しながら渡っていた横断歩道の角から大きなトラックが曲がってくるのが見えたんだ。
おれ達の他に横断歩道を渡っている人はいなくて………
おそらくこちらに気付いていないのだろう。
村田の方からは見えていないらしく相変わらず喋ってて、気がついたら村田を突き飛ばしていた。
何故かすべての動きがスローに見えて、突き飛ばした反動でおれは自然とトラックの方へ…………。
「いきなり突き飛…………渋谷っ!!!!」
おれに文句を言おうとした村田が、トラックの存在に気付いて。
いきなり突き飛ばしてごめん、なんて言う前に体に強い衝撃が襲ってきて……
そのまま視界は真っ暗になった。
[2回]
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