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3話

誰かがおれの名前を必死に呼んでいる。

……どこかで聞いたことのあるような声……。
だけど頭の中は靄がかかったように何一つ思い出せない。

おれの名前を呼んでいるのは………誰?






#3 失われた記憶






いつの間に眠ったのかな、気がついたらベッドの上で寝ていた。

重い瞼を持ち上げるとおれの顔を覗き込んでいた1人と目があった。
メガネをかけたちょっと髪が跳ね気味の、頭の良さそうな人。


「……………渋谷?」


その人の口が良かった、と少しだけ動き、大粒の涙をポロポロと零した。
ココはどこ?なんて聞く前に周りにいる人達もワイワイと喜びだす。


「ゆーちゃんっ、目が覚めたのね!!」

「怪我は……痛くないか?」

「…………っ!?」

「ほらほら2人とも、有利が驚いてるじゃないか。
 とりあえず医者を呼ぶ事が1番先じゃないのか?」


おれにいろいろと質問してくる2人に驚いていると、
後ろにいた優しそうな顔をした人が止めてくれた。

その後、部屋の電話でメガネをかけたお兄さんがどこかへとかける。




しばらくすると白い服を纏った……医者らしき人物と看護婦さんが部屋に入ってきた。
この人達が医者であるのならばきっとココは病院なのだろう。


「ユーリ君、気分はどうかい?」


にこっと微笑みながらおれに質問をいくつかしてきた。
おれの答えを聞きながら看護婦さんが何かをメモしていく。


「ココはどこか分かるかい?」

「………病院ですよね?」

「怪我の方はまだ痛むかい?」

「いえ、あまり痛くないです……」


どちらかというと、体が動かせないから痛みもないんだけど。
それよりここが病院なのは分かるけど、何で自分が病院にいるのかが分からない。


「ユーリ君はお友達を助けるために車にひかれたのよ、覚えてる?」

「………まったく覚えてないです……」


そんなおれの疑問に気付いたのだろう、看護婦さんが教えてくれた。

看護婦さんの話によるとおれは友達を助けるために車に跳ねられ病院に運び込まれたらしい。

事故で怪我をしたらしく、しばらくの間は安静にしておくことと言われた。




色々と検査を済ませると医者と看護婦さんは部屋から出ていった。
それと同時に部屋の外で待っていたのだろう、数人が部屋に戻ってきた。

そのうちの若い女の人が心配そうに声をかけてきた。


「ゆーちゅん、体の方はどこも痛くない? 本当に大丈夫?」

「あ、はい。怪我はそんなに痛くないから大丈夫なんです……けど…」

「…………渋谷?」

「あ、あの~……失礼ですけど。
 ……………みなさま、どちら様ですか?」


聞こうと思っていたことを思い切って聞いてみたのに何故か一瞬にして周りの空気が冷たくなった。

不味いことでも聞いちゃったかな、なんて思う間もなく
眼鏡をかけたお兄さんがおれの肩を掴んで強く揺さぶってきた。


「ゆーちゃんっ!!本当にオレ達のことを覚えていないのかっ!?」

「…っ痛!?」

体を動かしたことによって怪我がひどいのか体中に痛みが走った。
慌てて側にいた女の人が止めに入ってくれた。


「勝ちゃん、落ち着いて。ゆーちゃんは怪我をしてるのよ!!」

「ユーリ、本当に記憶が無くなって……るのか…?」

「はい。ぜんぜん記憶が無いみたいで、忘れちゃっててすいません」


おれのことを名前で呼ぶあたりきっと身近な人達なのだろうけど。
でも記憶が無いのだから、おれにもどうしようもないんだよなぁ……。

誰もが口を聞かず、再び病室の中が静まりかえった。


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