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11話

……どうしてかな?

出てきそうな記憶は、どこかで歯車が合わずに回らなくって。

前にもあったような気がするんだけど
頭の中には靄がかかったままで何も思い出せないんだ。






#11 失われた記憶






トランプを不器用ながら頑張って混ぜていたとき、コンラッドが慌てて部屋を出ていく音がした。

確か飲み物を取りにいったはずなのに……何かあったかな?


「……………コンラッド?」


名前を呼んだって返事は返ってこない。


「………………………村田?」


やっぱり返事は返ってこなくて何か分からないけど嫌な胸騒ぎがして
おれは痛む体を動かし少し慣れた動作で車いすへ乗り移る。
体の体重で手首に痛みが走ったけどそんなの気にしない。

ただ、胸がザワザワを騒ぐ気持ちが怖くて2人を探しに部屋を出た。


「どこにいっちゃったかな~……村田はトイレだからそこかな?」


力の入らない腕でタイヤを回し、お手洗いへと急いだ。
きっとそこに2人がいると信じて……。

廊下を少し行った所で人がザワザワと固まって騒いでいた。
何かあったのかと思って近づいていくとその中に村田とコンラッドもいた。

近づいてきたおれを見て2人が必死にジェスチャーをしてくるけど
訳がわからないままオロオロしている間に廊下の角からやってきた人物に会った。


「ちょうど良かった、人質になってもらうぜ!」

「…ぅわっ!?」


顔は帽子をかぶっているせいでよく分からない数人組。
手には黒っぽくて細長い……よく洋画のTVとかで見るやつ。
他の数人はキラリと光る刃物を手に持っていた。

頭の中で強盗だ、だなんて理解してるのにどこか頭の隅では冷静だった。


「ユーリッ!!」


遠くでコンラッドが叫んでいるけど、あちらも銃や刃物を向けられているので
下手に動く事ができないらしくこちらへは来れない。

……まぁ、普通の人がそんな刃向かっちゃ危ないからそれでいいんだけどさ。


「動くなっ! 下手に動くとこいつの命はないぞ!」

「…痛っ!!」


のど元に刃物を突きつけられた瞬間、首筋にピリッと痛みが走った。
勢いが良すぎて少しだけ、皮膚が切れてしまったらしい。

だけど自分でも不思議なくらい恐怖感は無い。

強盗達はお金を受け取るとかばんに詰め、再びおれの車いすを押して玄関へ向かった。
脱出するために最後までおれを人質に取るらしい。


「あのさ、人質になってるおれが言う事じゃないと思うんだけどさ……
 こんな事やってもいいことないと思うよ? …結局最後は自分に返ってくるんだしさ」

「う、うるさいっ!! 殺されたいのか!?」

「だって、まだ今なら間に合うと思うしさ。
 このまま捕まれば刑はそこまで重くならないし、おれがちゃんと証明するからさ……」

「黙れって言ってるのが聞こえないのかっ!?」


犯人は緊張のせいかピリピリと苛立っていて怒鳴りつけてくる。
でも、どうにかして助けてあげたいんだ……たとえおれを人質に取ってる人でも。
きっと何か理由があってこんな事をしてる訳であって、決して本心ではないはずだ。


「で、でもさ……」

「うるさいんだよっ!!」


とうとう怒り出した1人が車いすを押していた人物から奪い取ると勢いをつけて車いすを倒した。
もちろん車いすに座っていたおれは自然と床へと投げ出された。


「………がっ!!」


受け身も取れずに体を床に思い切りぶつけ床を少し滑った後、壁にぶつかって止まった。
それと同時に怪我に電気が走ったように痛みが走る。

体中がズキズキして瞼が勝手に降りてくる。
今は眠っちゃダメだ、なんて頑張って目を開けていようと自分を叱りつける。


「ユーリッ!!」

「……渋谷っ!?」


眠りに落ちる少し前にコンラッドと村田が廊下の角から走ってくるのが見えた。

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