ヴォルフが実家に帰った夜、
おれはグレタと2人で魔王専用の大きなベッドで寝ていた。
「……ねぇ、ユーリ…」
「ん、どうした?」
「ぅぅん、何でもなぃゃ…」
「そっか。グレタも眠れないのか~」
「…ぅん」
蒸し暑くて眠れないのか、グレタもまだ起きている。
窓の外にぼんやり見える木が風で揺れているのが見えるから
きっと外の方がまだ涼しいのかもしれない。
どうせ暑くて眠れやしない。
「なぁ、グレタ。ちょっとだけ外を散歩しよっか?」
「ぅん!」
手を繋いでパジャマ姿のまま廊下へと出た。
時間もだいぶ遅いのに廊下には見張りのために兵士が数人立っていた。
おれとグレタの姿を見つけて慌てて駆け寄ってくる。
「陛下っ!!こんな夜遅くにどうしましたか?」
「あぁ、ちょっと眠れないから散歩しようかと思ってさ」
「それなら我々もご一緒に…」
「あっ、グレタと2人で大丈夫だから、気にしないで」
「ですが…」
「何かあったら近くにいる人に声をかけるからさ」
「…了解しました。でわ、お気を付けて」
グレタの手を引いて廊下を歩く。
夕方頃まで降っていた雨のせいで空気がほんのり湿っていた。
頬を掠める風は涼しくて、とても気持ちが良かった。
2人で話ながら廊下を歩き回ってるうちに中庭に出た。
途端にグレタが嬉しそうな声をあげて駆けだした。
「わぁー、星がキレイ~!!」
「そっか。グレタは夜に来たことはなかったもんな」
「ユーリはあるの?」
「あー…うん。今日みたいに寝れない時にこっそりとね」
2人して芝生に座って空を見上げた。
星がキラキラと輝いていてとても綺麗だ。
いつもよりも星の数が多いような多くないような……。
「そういえば、今日って七夕だったっけ…」
「ユーリ~、七夕ってなぁに?」
「お父さんが住んでる地球の行事で、
織り姫と彦星って人が1年に1度だけ逢える日なんだょ、グレタ」
「…え。1年にたった1回しか逢えないの?」
なんで?と尋ねてくるグレタに分かりやすいように七夕について話すことにした。
「遠い昔、織り姫と彦星って人がいて、2人はとても愛しあってたんだ。
…だけど、あまりに仲が良すぎて仕事をしなくなったから神様が怒って2人を離れさせたんだ」
「……わぁ」
「逢いに行くにも2人の家の間には大きな川があって、渡れなかったんだ」
「船は使えなかったの?」
「それが…船も渡れないくらい、川の流れが早くて無理だったんだ」
「そっかぁ~…」
しょんぼりと下を向いてしまったグレタに慌てて話を続ける。
「…でもな、グレタ。神様は2人を離れさせちゃったけど、
真面目に仕事を頑張りだした2人のために1年に1回は逢わせてくれるんだ」
だけどやっぱり可哀相だね、と涙を流したグレタをおれはギュッと抱き締めた。
こんな悲しい話を……七夕の話をするんじゃなかった…。
おれはなんと言ってやればいいか迷ってしまった。
でも、しばらくの沈黙の後グレタが聞いてきたんだ。
「織り姫と彦星は1年に1回しか逢えないけど幸せなのかなぁ?」
「…うん、きっと幸せだと思うよ。永遠に逢えないわけじゃないしな」
「そっかぁ。じゃあ、2人が幸せならグレタも嬉しいっ!!」
ぇへへとグレタはそう言って笑った。
いつの間にこんなに優しい子に育ったんだろう。
2人の気持ちを思いやって涙を流して、2人が幸せならそれでいいと笑って。
「グレタはいい子だなぁ~」
「ぇへへ。ユーリ~、苦しいよ」
「おれは絶対にグレタを離しはしないからな!」
「うん、グレタもユーリを離さないもん!」
2人で笑いあいながら空を見上げた。
空には綺麗な星の川が見えた。
「……今頃2人は逢って楽しく過ごしてかもな」
「うん。きっと幸せに過ごしてるとグレタは思うよ!」
「…この時間がゆっくり過ぎればいいのにな」
「そうだね~」
「そろそろ部屋に戻ろうか!」
「うん!」
織り姫と彦星はきっと幸せ者だよな。
こんなに小さい子が心配してくれるんだ。
きっと幸せに今日1日を過ごしているに違いないさ。
― ぉしまぃ ―
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こっそり書きためてたのをまとめてみました☆
あれ、話の終わりってこんな感じでいいのかしら?
もうちょっといい終わり方とかあったら良かったかな……orz
まぁ、如月にはそんな力はありませんのでご勘弁を!(笑
2008.07.08 微妙に間に合ってない/笑
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