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* Blue and White *

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-*- Happy Birthday -*- 

梅雨もあけて暑くなり始めた7月頃。

ユーリ陛下が留守中の血盟城では会議が開かれていた。



「…という訳で、くれぐれもユーリ陛下にはバレないよう行動してくれ」



グウェンダルの言葉にその場にいた皆は深く頷き部屋を出て行った。

もうすぐユーリ陛下の誕生日。
今年も皆で祝おうと話し合いが行われていたのだ。

現在、部屋にはグウェンダルとコンラッドとヴォルフラムの3人が残っている。



「兄上、今年もギュンターをユーリに近付けないようにした方がいいのでは…」

「…いや、去年も大丈夫だったから心配はないだろう」



ヴォルフラムが心配そうに聞くと
グウェンダルは眉間のシワを深くしながらそう答えた。



「兄上がそう言うなら間違いないですね」

「まぁ保証はできないがな。…それからコンラート、
 あの部屋にはユーリ陛下を近付けないようにしてくれ」

「あぁ、分かった。
 とりあえずユーリがこちらに居ない間に出来ることを済ませておくかな」



コンラッドは笑顔で了承すると部屋を出て行った。




「………兄上、もう一つの計画も成功するといいですね」

「そうだな、あいつは勘が鋭いから気をつけなければな…」

「他のみんなにも伝えておきます」

「…あぁ、頼んだぞ」



コンラッドの居なくなった部屋では意味深な会話が続いていた。












-*- Happy Birthday -*- 










血盟城の皆で会議を開いた数日後、ユーリが地球から帰ってきた。




「おかえりなさい、陛下、猊下」

「ただいま、ウェラー卿。こっちは変わりない?」

「ただいま!ってか、名付け親なんだから陛下って呼ぶなよな~」

「こちらは特に変わりはなかったですよ、猊下」

「って事は無事にこのまま計画は進みそうだね、ウェラー卿」




聞かれた事に答えると猊下はニヤリと微笑んだ。

……この方は一体どこから情報を得ているのだろうか。




「なぁ、コンラッド。計画って何かやんの?」

「…ん?あぁ、そっか。 渋谷は知らないんだっけ?」




もちろん計画を知らないユーリはその話題に食い付いてきた。

今知られてしまっては水の泡だというのに、猊下は何を考えているのだろうか。

そんな俺の心を見透かしたように猊下は話を続ける。




「今年は眞魔国国民を交えての野球大会が開かれるんだよ」

「え?そんな大会が開かれるの?」

「……野球…大会?」

「と言ってもまだ計画の段階だから民には秘密にしてあるけどね~」

「野球大会やろうぜ!…やっぱやるなら体育の日だよな~」

「まぁ、まだまだ先だから急ぐ事はないよ」




どうやら猊下は俺が慌てるのを見て遊んでいたらしい。

着替えを受け取ると猊下はユーリと眞王廟の個室へ入っていった。

それからしばらくして着替え終わった2人と共に血盟城へと戻った。





 -*- -*- -*- -*- -*- 





血盟城に着くとグウェンダルに書類を片付けるように言われ
ユーリは猊下に助けを求めたが頑張れと応援されてしまい
結局ユーリは書類を片付けに執務室へ歩いて行った。

そんなユーリを見ていた俺を猊下はお茶に誘ってきた。




「…で、渋谷の誕生日企画の詳細はどうなってるの?」




出されたお菓子をつまみながら猊下が聞いてくる。

どうやら詳しいことはまだ知らないらしい。




「今のところ去年と同様に当日まで隠しておく予定です」

「なるほどね。今回はこっちに居るけど、そこら辺は大丈夫なのかい?」

「えぇ、グレタからの提案で怪我を装い看病を任せる事に…」

「それじゃ執務に支障がでるんじゃない?」




さすがは猊下、いろいろと考えが深い。




「一応グウェンダルもその点で不満を訴えてきたんですが…」

「……?」

「グレタが…普段ユーリと一緒に居れない事が多いのでどうしても、と」

「可愛いお姫様に言われて彼も了承したってわけかぁ~」




猊下はなるほどね~と呟きながらお菓子をまた1つ、口に入れた。

その後はこちらの世界での様子を聞き、猊下は眞王廟へと帰っていった。


ユーリの誕生日まで約半月あるのでグレタの作戦実行はもう少し先の話だ。





 -*- -*- -*- -*- 





しかし、プレゼントの準備を急いでいた矢先に事件は起きてしまった。




「…グレタ、怪我は大丈夫か?」

「うん、そんなに痛くないし平気だよ」

「おれの治癒でも治らないって…ごめんな」




階段を下りていたグレタが足を滑らせて本当に怪我をしてしまった。

その事を聞いたユーリが治療室へ飛んで行ったのも当然、
怪我は足を挫くだけに留まらず、頭の強打により数日間眠り続けていたのだ。




「ユーリは悪くないよ。それにね、グレタちょっと嬉しいんだ~」

「………え?」

「だって、こうやってユーリと一緒に居られるでしょ?」

「グレタ……。
 あぁ、お父さんがずっと側に居てやるから早く良くなろうな!」

「うん!」




ハプニングとはいえ計画通りに間違いないのでその場はグレタにユーリを任すことになった。





 -*- -*- -*- -*- 





「…このまま計画を進めるのは少々心苦しいな」

「しかし、このまま企画を途中で止めるわけにも…」

「そうですよ、今止めてしまえばグレタが責任を感じてしまいます」




ユーリが不在の執務室でグウェンダルとギュンターと俺の3人で今後について話し合っていた。




「グレタも続けてほしいと言ってましたし…」

「ここはグレタの願いも含め続けるしかないですね」





 -*- -*- -*- -*- 





グレタが怪我をしてから2日後、ようやくギーゼラから動き回る許可が出た。

その後はユーリの提案によりヒルドヤードに温泉治療に行くことになった。

もちろん俺は護衛として同行することに。




「ボクを置いて行くとは何事だっ!」

「ヴォ、ヴォルフラムっ!?」




予想通りユーリを追ってヴォルフラムが船で待っていたのはいうまでもない。




「なんかこのメンバーだと昔を思い出すなぁ~」

「あぁ、グレタがボク達の娘になった旅だったからな!」

「……あの頃はユーリの事、グレタ全然分かってなかった…」




グレタがしょんぼりと呟けば親の2人は慌てだした。




「っ!…グレタ、おれはあの時の事全然気にしてないよ?」

「そうだ!あの事があったからグレタとボク達は家族になれたんだぞ!」

「…うん。グレタ、2人の娘になれて嬉しかったよ!」




励まされようやく笑顔を見せたグレタに2人はほっとしていた。




「さぁ、長く外に出ていると体に障りますので室内へ入りましょうか」




時間も夕方過ぎだったので3人を促して室内に入った。





 -*- -*- -*- -*- 





次の日には船はヒルドヤードに着き、街を探索したり
温泉に入ったりでグレタの足の怪我も完治に近い状態になった。

そんな時、街の中で偶然ヒスクライフ氏とベアトリス嬢に会い
バンダービーア島で祭りがあると情報を得たユーリが
この前は行けなかったからぜひ行きたいと言いだしたため
ヒスクライフ氏の案内で祭りに行くことにもなった。

グレタもベアトリスと共に祭りに行けるのを喜んでいたため
ヴォルフラムも強く反対ができなかったようだ。




「わぁー!!すごい人だよ、ユーリ!」

「ほんとだ、なんかお祭りーって感じでいっぱいだな!」

「こら、ユーリ!そんな1人であちこち行くな!」




はしゃいで出店を冷やかしながら歩いていくユーリとグレタに
珍しく振り回されているヴォルフラムに苦笑するとキッと睨まれてしまった。

目でお前も護衛なんだからしっかり言えと言っていた。

色々とハプニングで温泉治療に来たけれど、もうすぐユーリの誕生日だ。

プレゼントも用意する暇が無かった俺は出店で見つけた青いガラスで出来たグラスを買った。




「喜んでくれるといいんだけどな…」




そんな俺を遠くからヴォルフラムが呼んでいたのですぐに駆けつけ護衛に戻った。





 -*- -*- -*- -*- 





何だかんだで気が付けばユーリの誕生日もあと2日になっていた。

温泉治療から戻った時には留守中の間に急ピッチで進めたのだろう、会場となる部屋が綺麗に飾られていた。




「……で、明後日は俺がユーリを連れて城下におりればいいんだな?」

「あぁ、夕方に頃合いを見て戻ってきてくれ」

「本当なら僕がユーリを連れて行く役をやっても良かったんだが
 仕方なくお前に譲ってやったんだ、ありがたく思えよ!」

「分かった。……ヴォルフラム、ありがとう」




なんだか上から目線でフンと鼻を鳴らして言ってくるヴォルフラムに苦笑するとやっぱり怒られた。

でも最近はヴォルフラムの俺に対する態度も照れ隠しであることが多いので
昔とは全然違う弟の反応に少し嬉しかったりもする。

これもユーリがこの世界に来てから変わったこと。

彼にはいつも助けられてばかりだ。





「とりあえず、あの部屋だけには近づけないように頼むぞ」

「あぁ、分かってるよ」




そろそろユーリが署名に疲れている頃だろう。

飲み物を差し入れした後はキャッチボールにでも誘おうか。

俺は部屋から足早に出て野球の道具を持って執務室へと急いだ。





 -*- -*- -*- -*- 





そして皆が待ちに待ったユーリの誕生日パーティー当日。

計画通りに事は進み、俺は午後からユーリと共に城下へ下りた。




「なんかさ、グウェンダルが俺たちが温泉治療に行ってる間に
 書類とか纏めててくれてあっという間に仕事が片付いちゃったんだよなー」

「そうなんですか?」

「いつもなら結構文句を言ってくるのにあんま言わなかったし…」

「グウェンダルにしては珍しいですね。
 やっぱ彼なりにもグレタのことを心配してましたし強く言えなかったのでしょう」




なんか変だよなーなんてユーリが俺に言ってきたので俺はとっさに誤魔化した。

グレタのことを気にかけていたのは間違いないので嘘ではない…はずだ。


それからお昼過ぎということもあって近くの飲食店でご飯を食べ、
その後はユーリの希望で国境の村へ行き子供達と野球をして楽しんだ。





 -*- -*- -*- -*- 





そろそろ日も暮れてこようかという頃、俺とユーリは城へと帰った。

しかし、城の中はシーンと静まりかえり人の気配が無かった。

城の警備員までいないという状況にユーリも不思議に思ったのだろう。




「……なぁ、コンラッド。城で何か起きた?」

「さぁ…俺にも何が起きたのかちょっと分かりませんね」




こんなのは計画に無かったはずだ。
もしかして俺たちのいない間に城で何かが起きたのか。

少し混乱している頭で冷静に考えようとしたが考えはまとまらず。




「とりあえず、城の中を探してみようぜ!」

「えぇ、危険ですのでユーリは俺の後ろを歩いてくださいね」

「城の中なんだからそんな警戒しなくても大丈夫…じゃないかも?」




俺の緊張がユーリにも伝わってしまったのか
軽く流していた彼は言われるとおりに後ろを着いてきてくれた。




「……僅かですがあちらから人の気配がしますね」

「ほんと?みんな無事だったんだな!」

「いえ、まだ油断は出来ないので気を付けてください」




たくさんの人の気配がするこの部屋はパーティー用に準備した部屋ではない。

……となると、何かあってこの部屋に集まってるとしか考えられない。




「ドアを開けますので、ユーリは下がって…」

「ううん、おれも一緒に部屋に入るよ!」

「……ユーリ。分かりました、俺が全力でお守りします」




先程とはうって変わって一歩も引かないユーリと共に俺は部屋のドアを開けた。





 -*- -*- -*- -*- 





「「「ユーリ陛下、ウェラー卿っ!
     ハッピーバースデーっ!!!!!」」」




ドアを開けた部屋の中は城中の人達でいっぱいだった。

そしてそこから聞こえてきた言葉にユーリと俺は驚いた。




「うわっ!!?……み、みんな?」

「……そうか、俺も今日が誕生日だったな」




自分の誕生日なんてすっかり忘れていた。

この事は計画にはなかったから俺へのドッキリだったらしい。




「どうだ!少しは驚いたか、コンラート!」

「…あぁ。これ以上にないくらいに驚いた………」

「っていうか、城中に誰も居ないから何かあったかと思ってビックリしたよ」




ヴォルフラムがフンと鼻を鳴らしユーリはへなちょこだからな!なんて笑っていた。

そんなユーリは皆に何もなくて良かった~って微笑んでいて。

グレタも嬉しそうに微笑んでユーリに抱きついていた。

グウェンダルに至っては眉間の皺がこれまたビックリするほど減っていた。



それから開かれたバースデーパーティーは素晴らしいものだった。





 -*- -*- -*- -*- 





「コンラッド!」

「……陛下、まだ起きてたんですか?」




パーティーも盛り上がって無事に終わった後、
ベランダに出て空を見上げているとユーリが何か持って走ってきた。




「もう、陛下って名付け親のくせによぶなよな!」

「すいません、つい癖で…ユーリ」

「最初っからそう呼べよな~。……あ、それからプレゼント!」

「…え、俺にですか?」




そう言いながら渡されたプレゼントに俺は目をまるくした。

まさかユーリから貰えるなんて思ってなかった。




「ありがとうございます。…あ、これは俺からのプレゼントです」

「わっ、おれにも準備してくれてたんだ。ありがとな!」




お互いプレゼントを交換して




「じゃぁ、せーのであけようか!」

「えぇ、一緒に開けましょう……気に入ってもらえると嬉しいですね」

「気に入ってくれるといいな~、せーのっ!」




2人で同じタイミングでプレゼントを開けた。




「……っ!!?」

「あれ、もしかしてコンラッド…同じお店で買った?」

「バンダーヴィーア島のお祭りの時に見つけて買ったんですが…」

「こんな広い世界で同じ物を買っちゃうってすごいな!」

「ほんと、こんな偶然…正直ドッキリパーティーより驚きましたよ」




2人の手には同じ青色に輝くグラス。

どうやらお祭りの時にユーリも同じ物を買っていたようだ。




「ハッピーバースデー、ユーリ!」

「ハッピーバースデー、コンラッド!」



それから2人して笑いあって綺麗な星空を見上げた。

いつも見ているはずの空なのに、とても綺麗だと思った。


きっとそれはユーリと一緒に見ているからで。

また来年も同じ日に誕生日を迎えることが出来ると思ったら

それだけで俺の胸は幸せでいっぱいになった。
 





2009/08/01

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